オレのすきなもの

オレのすきなものについて書きます。

絵画

オレは幼い頃、絵を描くのも見るのも好きではなかった。

 

オレが描いた絵は皆の描いた絵に比べていびつに見え、親に連れていかれた美術館は退屈な時間だった。親は心配して児童向けのいろんな作家の画集を買ってくれたが、一向に興味はわかなかった。

 

しかし、ある日の美術展で見た絵が全てを変えてくれたように思える。それは大きな絵で、生卵がこぼれ落ちる絵だった。写真のようにも見えた。何才の時か記憶にないが、オレはその絵をしばらく見続けた。

 

なんでこんなものを描いたんだろう、それともこれはでかい写真なんだろうか。

 

まさにその時から、という綺麗な思い出ではないが、少しずつ、オレは絵を見ることと描くことが好きになった。親が買ってくれた画集を見、ダリの絵を真似した。下手のままだったが、とても楽しく思えた。

 

成長した後でも、アメリカのナショナルギャラリーでダヴィンチとモネの絵の前で思わず足が止まり、現代美術館でダリの溶けた時計の絵の小ささに驚き、大塚国際美術館ピカソゲルニカ(の贋作)をずうっと眺めていたりした。

 

絵を見る、絵を描く、というのはとても奇妙な動作に思える。美術館に行くことが趣味だという人と、絵なんて見て何が楽しいのかという人、オレにはどちらの気持ちもわかる気がする。

 

絵を見ると思考が洗練される。作者が誰に何を伝えたかったのかを考える絵がある、ただただ思考も言葉も沸かず、眺めているだけで時間が経つ絵がある。それが何を意味するか、オレにはよくわからない。